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変則比率賭け

最適なケリーベッティングはベット金額を正確に調整する必要がある(カジノチップだと、端数の問題で正しく賭けられない場合も多い)。

 

 

よって、理論上は威力があっても、実践で完全なケリーベッティングを行うのは不可能に近い。

 

 

この問題を解消するために、実践的な「変則比率賭け」と呼ばれる手法を使う。

 

 

変則比率賭けのベッティングはケリー基準に近いが、いくつかの重要な違いが存在する。

 

 

まず、1回のプレイセッションでどんなに大きく勝っても、または負けても、それが全体のバンクロールに対して小さな金額であるということを前提としている。

 

 

そうすれば、1ベットごとにいちいちベット金額を調整する必要がなくなる。

 

 

つまり、プレイセッションが始まる前に、バンクロールを考慮したうえで、セッション中に使う全てのベットサイズをあらかじめ決めておくことができるのだ。

 

 

さらに、ベットは青天井ではなく、最大ベットが決められている。

 

 

理想的には、期待値がどんなに高くなっても、常にそのアドバンテージに比率した金額を賭けたい。

 

 

しかし実践では、1~100ユニットのスプレッド(有利な場合以外の1ユニットベットに対して、有利な場合に100ユニットを賭けるなど)はほぼ不可能である。

 

 

実際のカジノでプレイすれば、怪しまれないようにプレイヤーが自らのベット金額に天井を作るのは当然だし、結局はテーブルのマックスベットによって必ず天井が作られる。

 

 

ここで最低ベットから天井までの幅を「ベットスプレッド」と呼ぶ。

 

 

カードカウンティングシステムの性能を測る(他のシステムと比較する目的で)ときに用いるベンチマークを決めることは、なかなか難しい作業である。

 

 

なお、ここで紹介しているシステムの比較のためのシミュレーションは、変則比率賭けを採用することにしている。

 

 

そうすることによって、それぞれのシステムの破産確率が平等になるからだ。

 

 

比較するに当たり、変則比率賭けが最も適正だと仮定すると、決めなければいけない変数が2つほど出てくる。

 

  • ひとつ目がベットスプレッドの幅をどうするかで
  • 2つ目はどれほどのペースで最低ベットがベットスプレッドに沿って大きくなっていくのか

である。

 

 

すでに、ベットスプレッドの選択とその実際の適用に関して、いくつか興味深い話題に触れてきた。

 

 

理想的には、無限のスプレッドにしたいところだが、実際にはそうはいかない。

 

 

カウンターが目指すべき妥当なスプレッドは、

  • 1や2デッキで1~5
  • 6や8デッキでは1~10

であるというのが我々の見解だ。

 

 

ベットスプレッドに沿ってベットを上げていくスピードにも注意すべきだ。

 

 

これは、どれぐらいのスピードで最低ベット(不利なとき)を最高ベット(有利なとき)に変えていくかの問題である。

 

 

有限なバンクロールである限り、その都度のアドバンテージに直結した比率でベットの上げ下げをする必要がある(ケリーと同様)。

 

 

ランプの傾きはバンクロールの大きさに比例し、バンクロールが大きいほど、ランプの傾きは急になる(最大ベットの回数が多くなる)。

 

 

ルールとベットのベンチマーク

 

ここで紹介しているパフォーマンスの計算の軸となったルールとベンチマークを以下に示す。

 

シングルデッキ
  • H17、DOA、noDAS、65% ペネトレーション
  • スプレッド1~5、ランプ3

 

2デッキ
  • S17、DOA、noDAS、75%ペネトレーション
  • スプレッド1~5、ランプ3

 

6デッキ
  • S17、DOA、DAS、75% ペネトレーション
  • スプレッド1~10、ランプ6

 

8デッキ
  • S17、DOA、DAS、75%ペネトレーション
  • スプレッド1~10、ランプ6

 

表記について
例えば、「最初のどんな2枚でもダブルダウンが可能」なルールはDOA と表すが、これは “Double On Anything" (どんなカードでもダブルダウンできる)の略語である。

 

そのほかにも、ディーラーがソフト17でヒットするかスタンドするかが一般的なルール設定の条件となっている。

 

ディーラーがソフト 17でスタンドするルール設定のことをS17と表現し、その一方でソフト17をヒットする場合にはH17と省略する。

 

さらにスプリット後のダブルダウンが可能な場合には、それをDAS(Double After Split =スプリット後のダブルダウン)と表現する。

 

逆に不可能な場合は noDASである。

 

 

ここで採用したランプの値は、実際にカジノでプレイする場合に実現可能だと思われる数値である。

 

 

2デッキのスプレッド1~5を例に挙げてみよう。

 

 

最低ベットは1ユニットで、最大ベットは5ユニットである。

 

 

その2点の間を、ベット金額は、ランニングカウントで測る期待値に比例して一直線に上昇していく。

 

 

そこで選んだランプ係数は 3 である。

 

 

簡単に言えば、これはK-0ランニングカウントをもとに推測した期待値×3ユニットを、理論上ベットするという意味である。

 

 

例えば、期待値が+1.0%なら、できるだけ3ユニットをベットする。

 

 

期待値が+1.67%以上まで上昇すると、本来なら5ユニット以上を賭けたいところだが、5ユニットの天井を設けているので、それを代わりにベットする。

 

 

期待値が + 0.33%以下に落ちると、本当は1ユニット以下をベットしたいのだが、最低ベットが1ユニットなので、それを代わりにベットする。

 

 

2デッキゲームにおいて、このようなベット方法のベンチマークを用いると、ベット全体の67%前後は最低ベットとなり、15%が最大ベットとなる。

 

 

この2デッキベンチマークにおける平均べットは2ユニットである。

 

 

実際のカジノでは、1ドル以下の金額をベットできない。

 

 

そこで、完成型K-Oスマートシステムのカウント方法の分析に当たり、ベットサイズを決定するために特定の幅の整数値をそれぞれのカウント値に割り当てた。

 

 

そのベッティングスキームを、以下に示す。どれも上記で説明した理論上の基準に厳密に従って、計算されたものである。

 

変則比率賭け表(デッキ数別)

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