ホールカードプレー
カジノによってはディーラーのアップカードが10である場合に、プレーヤーがプレーをする前にブラックジャックかどうかホールカードを確認するという手順を取っているところがあります。
わざわざすべてのプレーヤーの手をプレーしてからホールカードを開いてみたらブラックジャックだったというのはカジノにとって時間の無駄だからです。
アップカードが10の時に毎回プレーの前にディーラーがホールカードを覗くことによってカジノ側は無駄なプレー時間を節約することができ、単位あたりの収益をわずかに引き上げることができるわけです。
ところが、これは賢いプレーヤーにとって絶好の収益チャンスとなる場合があります。
ホールカードプレーと呼ばれるテクニックが使える可能性が出てくるからです。
ホールカードプレーとはディーラーのホールカードが何かを当ててその情報にもとづいてプレーすることを言います。
ホールカードプレーとはこのようなプレー方法の総称であり、これには「テルプレー」、「ワーププレー」と呼ばれる合法的なプレーと、「フロントローディング」「スプーキング」と呼ばれる違法すれすれのプレーが含まれます。
「テル」とは「ばらす、打ち明ける」といった意味です。
「ワープ」とは「反り」という意味です。
テルプレーはディーラーの細かい素振りを読むことにより向きカードを当てるというもの。
ワーププレーとはカードのわずかな反りを読むことにより裏向きカードを当てるという技術です。
いずれも極めて高度な技術であり、テクニックというよりは一種の「芸術」と言った方が近いかもしれません。
フロントローディングとスプーキングはイカサマとみなされる場合がありますのでお勧めできませんが一応ご紹介します(これも法律上はグレーエリアです)。
@テルプレー (Tell Play)
ディーラーのアップカードが10の場合にすぐにホールカードがエースかどうかをチェックするカジノでは、ディーラーは、プレーヤーがプレーする前に既に自分の手が強いか弱いか分かってしまいます。
ディーラーはこの情報を絶対にプレーヤーに漏らさないように厳しく指導されており、天井の監視カメラは常にこのような不正がないかを見張っています。
しかし、ディーラーも人間です。
どんなに隠そうとしても、ついそれを無意識に体に出してしまう場合があります。
このようなボディーランゲージを的確に読んでホールカードを当てるのがテルプレーです。
例えば、ディーラーによってはホールカードが10で計20の場合にだけ両カードをキチッと両手で揃えたり、動作が急に早くなったり、何らかの癖を持っていることがよくあります。
また、普段そのような癖の出ないディーラーでも、ゲームに感情移入してくると、途端にはっきりと癖が現れる場合があります。
どのような場合に感情移入するかというと、例えばディーラーが男性でプレーヤーがきれいな女性であったり、テーブル全体が和気あいあいと盛り上がってみんなティップをはずんでいるときなどはディーラーとしてはプレーヤーに勝ってほしいと感じはじめますし、逆に、やたらと威張り散らすプレーヤーに対しては何としても負かしてやろうと感じるものです。
ディーラーがこのように感情移入すると、普段は全く癖のないディーラーでも、わざとではないかと思われるほどハッキリと体でヒントを与えてくれることすらあるのです。
この情報は2段階に分けて出されます。
まず最初にディーラーがホールカードを見た瞬間、そして次に各プレーヤーがプレーを考えている段階です。
ホールカードを見た瞬間については、既に述べた「他人の手を読む」技術と似ています。
プレーヤーの味方になっているディーラーは、自分が強い手の場合には内心がっかりしているため、不満げにため息をついたり、顔をこわばらせたり、あるいは自信なさそうに肩をしょげる等のリアクションが期待できます。
これに対し、ディーラーの手が弱い場合には逆に満足そうに胸をはったり、わずかに笑みを浮かべるかもしれません。
ディーラーによって皆違った癖を持っていますのでプレーの前によく観察して、そのディーラ一特有の癖をしっかりと把握してからプレーするといいでしょう。
次に、プレーヤーがプレーを考えている段階でのディーラーからの「テル」を考えてみましょう。
仮に、ディーラーが20の時にプレーヤーが15をヒットすべきか悩んでいるとしましょう。
この場合、このままスタンドすればプレーヤーが100%負けることがディーラーにはわかっています。
ので、プレーヤーを応援しているディーラーであれば何が何でもヒットしてほしいと思うはずです。
逆に、ディーラーの手が弱い(12~16)場合にはプレーヤーにスタンドしてほしいと思うでしょう。
それではこの2つの場合をどのようにすればディーラーの素振りを見ただけで見分けることができるでしょうか。
これはディーラーの身になって考えれば分かります。
もしあなたがディーラーで相手にどうしてもヒットしてほしいと思えば、あなたはそのプレーヤーがヒットするかどうか悩んでいる時に、そのプレーヤーの方に身を乗り出し、プレーヤーのヒットカードをめくる準備をするような動作をするでしょう(シューゲームであれば左手をシューに近づけ、ハンドヘルドゲームであれば両手をプレーヤーに近づける)。
目は相手の目をしっかりと見つめて、「ヒットに、ヒットだ」と念じるのではないでしょうか。
反対にスタンドしてほしい時には体と手を少しプレーヤーから遠ざけ、目もプレーヤーからそらすことでしょう。
このように、上体、手、そして目がポイントなのです。
これらのボディランゲージはディーラーが感情移入していればしているほど信頼できます。
そのため、プレー中にディーラーがより感情移入するように雰囲気を盛り上げることもテクニックの一つなのです。
例えば、そのディーラーの手さばきの良さを褒めるとか、会話をはずませる等々、いろいろ方法があります。
プレーヤーが複数の場合には、自分より先にプレーした人に対するディーラーの行動からもホールカードに関するヒントが得られます。
次のような場合を考えてみて下さい。
ディーラーのアップカードは10、自分の前のプレーヤーの手が16の時に、彼はベーシックストラテジー通りヒットしました。
するとディーラーはいつもよりゆっくりとヒットカードをめくりました。
さて、あなたの手516の場合にあなたはヒットすべきでしょうか、それともスタンドするべきでしょうか。
答えは、スタンドです。
なぜでしょうか?
もし、ディーラーが20などの強い手であれば、ヒットしたとしてもプレーヤーが勝てる可能性は非常に小さく、ディーラーとしては「まあ今回はあきらめて次の手でがんばって」とでも思いながら普通にヒットしたカードをめくることでしょう。
これに対し、ディーラーの手が12~16と弱い場合には、ディーラーはプレーヤーが16をヒットするのを見て、「何でヒットなんかするんだ。スタンドしてこっちかバストするのを持った方がいいのに」と思いつつ、プレーヤーのせっかくの勝てるチャンスをなんとかつぶさずに済むように小さなカードが出るように願いながらカードをめくります。
つまり、このような場合にはディーラーにとって次にどんなカードが出るか非常に気になるところなのです。
そこで、ゆっくりと劇的にカードをめくるわけです。
また、そのカードをめくってプレーヤーがバストしてしまった時にディーラーが非常に残念そうな表情をしたり、小さなカードが出てホッとした表情をしたときには、ディーラーの手がおそらく弱いだろうと推測できます。
なお、ここまではディーラーがプレーヤーを応援している場合を扱いましたが、逆にディーラーがプレーヤーに負けてほしいと思っている場合はどうでしょうか。
やたらうるさいプレーヤーがいるときや、ちっともティップがもらえないときなどがこれにあたります。
この場合には先程の逆と考えて下さい。
つまり、ディーラーはプレーヤーにとって不利なプレーをしてほしいわけで、ディーラーの手が弱ければプレーヤーが16のときにはヒットしてほしいと考える等々、すべてさっきの反対になります。
ただし、この場合気をつけなければならないのは、このようなディーラーは時々プレーヤーの裏をかこうとして、本来予想されるのとは逆の行動を取ったりもします。
このように、プレーヤーに負けてほしいと思っているディーラーのボディランゲージは100%信頼することはできません。
さて、このようにディーラーのホールカードが分かったとして、この情報は次のようにプレーに生かします。
次の表をご覧ください。
この表の通りにプレーすれば、テルプレーをしていると疑われずに、その効果を最大限に生かすことができます。
理論的には、毎回完璧にテルプレーができたとして、収益率は約2%程度上昇します。
しかし、現実にはテルによって100%正確にホールカードを予測することは不可能です。
そこで問題となるのが、どの程度正確なテルであれば期待収益率を押し上げる効果があるか、逆に言うと、テルにいくら以上の誤差があるとかえって期待収益率を押し下げてしまうのか、ということですが、テルが3分の1以上外れる場合にはかえって損をしてしまいます。
このような場合にはテルプレーに頼らない方がいいです。
Aワーププレー(Warp Play)
ディーラーのアップカードが10のときにホールカードをディーラーが覗くときには、通常アップカードをホールカードの上に置き、それを2枚ともわずかに上にめくって覗き込みますが、そのときのめくり方によってはカードにわずかな「反り(ワープ)」が残ることがあります。
これに着目するのがワーププレーです。
まず、どのようなカードにどのような反りが残るかを考えてみましょう。
上向きのカードが10のときにそれをホールカードと一緒にめくるということは、この10のカードには裏向きにした時に凸になる反りが残るはずです。
アップカードがエースの時にもやはりチェックするため、エースにも同様の反りがつきます。
同じトランプをしばらく使えばその中の10とエースの大部分にこのようなワープが付くことになります。
しかし、ディーラーによってははげしいシャッフルをし過ぎるため、せっかくのワープがすべて消えてしまうこともありますので、このワープをつかってプレーをするためにはホールカードを覗くときには強くカードを曲げ、シャッフルのときにはカードを非常に軽く扱うディーラーが必要となります。
「そんな都合のいいディーラーがいるわけないじゃないか」と思われるかもしれませんが、実際にカジノに出掛けてみるとこれが案外いるものです。
このようなディーラーでトランプ1デックにつき1時間ほどプレーできれば十分にワープがつきます。
つまり、シングルデックゲームでは1時間、シックスデックゲームでは6時間ほどでほとんどのカードにまんべんなくワープがつくわけです。
このような好条件のテーブルが見つかったらいよいよプレーに入りますが、まず注意しなければならないのは、ディーラーによってワープの付き方が様々であり、すべてに当てはまる法則がないということです。
ディーラーの覗き方によってはカードの左手前に強く折り目がつく場合もあれば、それが右奥の場合もありますのでよく観察してください。
プレーの仕方はテルプレーの場合と基本的には同じです。
ただし、ワーププレーにはテルプレーにはない大きな利点があります。
それは、インジュランスをつかうかどうかの判断を行う際に有効だということです。
アップカードがエースのときには裏カードを覗く前にインシュランスを使うかの判断をしなければならないためにテルプレーは使えませんが、ワーププレーはこの場合でも問題なく使えます。
これを駆使してインシュランスプレーを完璧に行うことができればそれだけで2%以上の期待収益率アップにつながるのです。
これだけを考えてもワーププレーの威力がお分かりになるでしょう。
ただし、いくらワーププレーが強力だからと言って、自分でカードをわざと曲げたりしては絶対にいけません。
これは違反行為であり、見つかったら大変です。
テルプレー・ワーププレーのような高度な技を一朝一夕で身につけることはできません。
ディーラーのかすかな表情、カードのわずかな曲がり具合を的確に見分けられるようになるには相当な経験が必要です。
しかも、そもそもプレーの前に裏カードを覗くディーリング方法を採るカジノ自体が極めて少ないのです(ラスベガスの主要なカジノではHorse-shoeしかありません)。
しかし、テルプレー・ワーププレーを駆使できるようになればあなたの収益率が大幅にアップするばかりでなく、ともすると無味乾燥になりカード・カウンティングに何とも言えない「味」が加わり、あなたのブラックジャックの世界は格段に広がることでしょう。
Bフロントローディング(Front Loading)
「フロントローディング」と聞いただけでは何のことやらよく分かりませんが、何のことはない、ただ単にディーラーがホールカードを自分に配るときにそれを下から覗き込むというだけのことなのです。
これがうまくできるためには余程不注意なディーラーを見つけないといけません。
新米のディーラーだとプレーヤーに見やすいようにホールカードを配ることがありますが、これも非常に稀なことです。
さらに、プレーヤーは目の位置をテーブルすれすれのところまで下げないとうまく覗けません。
このプレー方法は違法すれすれとされており、使うチャンスもほとんどないので、あまり気に留めることもないてしょう。
Cスプーキング(Spooking)
これは、ディーラーがホールカードをチェックする際に、ディーラーの後側にいるパートナーに覗いてもらい、そのカードが何かということを何らかのサインにより教えてもらうという方法です。
この方法は違法ですので絶対にお勧めできません。
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