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はじめに

 

カジノ行きの飛行機の中で、高レートギャンブルの場で知り合った資産家や自営業で成功を収めた人々の口調と佇まいを思い出してみた。

 

 

現地のカジノに着いたら、一晩だけでもいいから、それを真似る必要があったからだ。

 

 

初めて行くカジノで「カネを落としてくれる人」、つまり「カモ」というふうに自分を印象づけられれば、相当に優遇され、あとあと楽になることが多い。

 

 

そんなわけで、いつものシアトルぐーたらスタイルの服とは違ったスーツ姿でカジノに登場し、ちょいと別人の「仮面」を被ってカジノスタッフに接する。

 

 

演技の基本はいつも「ちょっと偉そうに、かなりせっかちっぽく」で決めている。

 

 

特に向こうのミスや不手際があると、険しい顔をし、声も多少は荒げる。

 

 

金持ちはわがままなもんだ。

 

 

金を出すんだから、それぐらいのサービスを受けるのがスジだ、と。

 

 

ただ僕の場合はカジノホテルに金を出さないどころか、金を取る側だ。

 

 

「ギャンブラー」が「不利な賭けでもスリルのためにプレイする人」であれば、僕達「アドバンテージプレイヤー」はけっしてギャンブルをやっているわけではない。

 

 

むしろ投資に近いものである。

 

 

負けるギャンブルはひたすら避けつつ、少しでもプラスになるギャンブルをひたすら集中攻撃する。

 

 

判断力と自己コントロールがそろっている人間ならば、「正しいべット」の繰り返しが可能となり、儲けの多寡は単純に時間の問題となる。

 

 

ただ、当然誰もがただちに有利なプレイをやれるわけではない。

 

 

それなりのトレーニングと実践の積み重ねが必要になる。

 

 

常に有利なギャンブルにしか目を向けないこのアドバンテージプレイヤーの商売道具となるのは、まさしく高濃度で詰まっているノウハウである。

 

 

まず技術を身につけないと有利もクソもなく、ただの負け組ギャンブラーとなってしまう。

 

 

幸いなことに、カードカウンティングという技術は、なにも映画の「レインマン」の如く、天才にしかできないものではない。

 

 

簡単な暗算がそれなりにこなせる人なら、必ず習得できる。

 

 

しかも数多くあるカードシステムの中でも、K-Oシステムは特に習得しやすく、賢く遊びながら「投資」するのに最も適したものだと言える。(システム以外にも、カードカウンティングの基となる原理や歴史まで紹介する)

 

 

言ってしまえばこのサイトを熟読すれば、ほかのカードカウンティングの本は一生要らないはずだ。

 

 

現地でカジノのホストが出てくると、僕は大胆に「オレたちはしばらく高いとこで遊ぶから、部屋と飯ぐらい出してくれるよね?」と尋ねる。

 

 

「ああ、初めてのお客様ですので、まずはプレイ内容を拝見してからと思いまして……」。

 

 

むむっ、これは予定とちょっと違う。

 

 

しょうがない。

 

 

まずは見せ金を出そう。

 

 

日本の銀行から下ろしたての「四本」を、キャッシャーのところに、少しイラツキ気味にポンと置く。

 

 

全部現地のカネに替えて、カジノに預けるようにオーダーをする。

 

 

この時点で既にホストは戸惑いの表情を隠せない。

 

 

その後数時間高レートで「派手っぽく」プレイしていると、再びホストが現れる。

 

 

「あの、お部屋がご用意できましたので、鍵をお渡しいたします。それから、次回は航空券もサービスでご用意いたしますので、ぜひ近いうちにまたお越しいただければ、光栄でございます.……」

 

 

カジノはビジネスだ。

 

 

向こうの条件に合う客は、歓迎される。

 

 

そこまでくれば、あとはここで覚えたことをテーブルで実行して、結果を待つのみ。

 

 

スキあらばそこに食らいつき、穴が閉まるまで実を収穫する――それがアドバンテージプレイヤーの歩む道。

 

 

遊ぶだけでカネが勝手に入ってくるなんて言ったらウソになる。

 

 

これはけっして遊びではない。

 

 

では、ページをめくって、さっそく「仕事」を始めよう……。